2012/10/02

ケアプランのつくり方 序文

以下、本の巻頭に書きました序文です。
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はじめに

 介護保険法ではケアマネジャーの定義は「連絡調整等を行う者」とされており、決して「書類を作成する者」等とはなっていません。利用者である高齢者や家族が必要な介護サービスなどを利用できるように連絡調整などをするのがケアマネジャーの本当の仕事です。

しかし、実際には関係する法令や通知の数は膨大で書き方の一言一句にまで重箱の隅をつつくような指導をするような市区町村もあり、書類作成や事務手続きのために返って連絡調整業務に支障を来している現実があります。ケアマネジメントの質を向上させるためにはのびのびと実践できるような環境を整えるのが本来の制度政策のはずですが、実際には厳格管理の方向へ進み、更なる悪循環に拍車をかけているように感じています。

 また、現場従事者は何年も介護に携わり分かりづらい法令なども少しずつ、しかし、確実に学んできていますが、一方、保険者職員には2、3年で人事異動があります。まったく介護業界のことを知らない方が突然、介護事業の指導をしなければならなくなります。

 ケアマネジャーは主に自らと関係機関に関するコンプライアンスを理解しておれば大体のことは足りますが、保険者は広くあまねくすべての関係法令の知識が求められますから、その結果、難解な法令などをにわか仕込みで学ばねばなりません。その結果、法令遵守を高らかに謳うべきはずの保険者が法令を誤読してしまい、違法性の高い指導をしている場合さえ少なくありません。

生活色が濃密に関わる介護は地域の特性が色濃くでますから、その運用面で柔軟な対応ができるように地域独自の取扱を行うことが本来の「ローカル・ルール」といわれるものですが、単に法令を誤読した解釈を強要することをもってローカル・ルールと謳っている場合もあるようです。

 その結果、本当に介護や支援を必要としている高齢者や家族は保険の給付を受けられず生存権をさえおびやかされては本末転倒です。支援を本当に必要としている人が必要な分だけ利用できるように連絡調整することがケアマネジャーの仕事なのですから。その意味でケアプランの書き方や作り方にスポットライトがあてられる昨今の風潮はケアマネジメント実践の観点からは決して喜ばしいことだとは思っていません。書類やコンプライアンスのために人が存在しているわけではなく、人のためにそれらはあるべきだからです。

 そのような理不尽な現実に不満を感じながらも理論的に反論するほどの時間的余裕もなく疲れ切っているのが現在の多くのケアマネジャーの現実ではないでしょうか。

 そのような意味で本書がケアプラン作成に関する無用な不安や手間を取り除き、ケアマネジャーが本来の連絡調整業務に専念できるための一助となることを願っています。

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