◆介護は人間関係。だからこそ家族会
そんな私のような家族介護者と語る場を持とうと会を始めたのは、特別養護老人ホームへ入る1年程前。私自身、一番キツい頃でした。
当時は保健所主催の家族会があったのですが、それが打ち切られる事になったのです。
でも、私としては、せっかく近所に仲間がいると分かったので、また一緒に会える事があったら良いなと思い、「ねえ、集まらない」って電話で連絡を取り合って、わが家に来てもらったのが始まりでした。
この会も1994年からですから、もう18年になるのですね。
10年以上のお付き合いの方も、ご夫婦のご両親に伴侶と5人の介護をずっと一緒に見守らせて頂いた方もいます。
一度来て、1年2年後に「まだやっていますか?」と来られる方もいます。
毎回の参加者は、それほど多くはありません。2~3人とか誰の来ない時もあります。
でも、人が来る限りは続けていきたいと思っています。
たった一人でもいい。ここで喋って、言いたいこといって、帰り際、少しでも笑顔を見せて帰路についてくれれば。
「話を聞く人がここにいるよ」っていう場所を提供し続けていきたいと思っています。
会を続ける中で感じることは、つくづく介護ってのは「人間関係」なんだなということ。
というのも、あるとき、こういう介護者がいらしたのです。
お嫁さんでした。
最初は、今、誰にどんな介護をしているのか? そんな話を皆さんされるのですが、その方は、「私が嫁に来た時に、この嫁ぎ先でどんなイヤな思いをしたか」を語り始めたのです。
それを、彼女は2時間以上、語り続けたのです。
そこに来ていた数人は、ウンウン頷きながらずーっと聞いていたのです。
なんだか、すごく濃い空間でしたよ。
そして、最後の数分に、今の姑の実際の介護の辛さを語ったのです。
「それだけの思いがある私は、姑の介護をしなければいけないことが辛くて仕方ない」という気持ちが、みんなにヒシヒシと伝わっていました。
「初めて会う、見ず知らずの人達にそんな家庭の歴史を語る」って、ふつうの社会であります? ないでしょう。
でも、同じ介護という仲間と知ると、ありえるのです。
そうした感情の部分が大きいのが介護。
ホント、介護の大変さって、介護度とか時間の束縛とかじゃない。介護する人とされる人の人間関係なんだと思うのです。
◆ケア従事者の方への想い
ケア関係職、ケア関連のサービスについては、いろんな思いがあります。文句も言ってます。
まずは、仕事とされている方々は要介護者を対象に働いている方々ですが、助けているのは、その利用者・家族一人ではない事を伝えたいです。
私たちが要介護者と共に言う「ありがとう」は、単に「要介護者を介護してくれてありがとう」だけではないのです。
要介護者を在宅で看ている主介護者に安心と休息を与えてくれての「ありがとう」でもあるのです。
その主介護者が休める事で、家族が安心出来る「ありがとう」でもあるのです。
そして、その介護家族に心を寄せている兄弟、親戚縁者からの「ありがとう」でもあります。
本当に介護を仕事としてくれる方々がいなければ、私たち介護者は生きていけません。
大げさじゃないですよ。私だって、皆さんがいたから生き残れたのですから。
そのありがたみは重々、感じています。
でも、一方で、介護が、より要介護者に寄りそう様になった事で違和感を感じることもあります。
例えば「本人に寄り添って」とか「本人の為に」とかの介護を、ケア関係職が家族にも求める事です。
ケアを仕事としている人と、家族に要介護者が現れちゃって突然、介護者になっちゃった人では、同じ介護は出来ないのです。
まずベースが違います。
私流に言うと「ケアを仕事としている人は、ケアの勉強をして、お金をもらって、休日もあって、集団で見て、イヤになったら退職も「アリ」でしょ。こっちは、何も知らない素人が、ただ働きで、休み無く、たった一人で、死ぬまで逃げられない立場なのですよ」ってこと。
そして家族だからこその人間関係です。
「同じ話を繰り返し話しても優しく答えてあげましょう」と言われても、他人が週に数時間、聞かされるのと、過去何十年、その話題で心痛めてきた家族が聞かされるのでは全くちがうでしょう。
「こんなふうに身体を寄せて介助すると楽ですよ」と言われても、さんざん罵り合ってきた関係では、そばに寄る事さえ出来ない家族もいるでしょう。
「同じ介護をするんだから」と杓子定規に考えないで、それぞれの家庭における要介護者と介護者の関係性にまで思いを寄せたり、検討してほしいと思っています。
そういう事って、現役の介護者家族ってケア関係者の方に遠慮して、言いたいことも我慢しているのです。お世話になっているからって。
だから、今、介護をしていない私は、そうした家族の代弁者となって意見を伝える役回りもしています。
だって、人質とられてないもの、私は。だから、遠慮も怖いものはありません。
そのかわり、介護を受けるようになったら、ころっと変わりますから「介護職に好かれるように」(笑)
(取材 2012.6)
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